狩野川かのがわ)” の例文
「うん。このアユは狩野川かのがわだな。いや、待て待て。狩野川にしては、歯がこまかいぞ。一体、ドブ釣りのアユと、友釣りのアユは……」
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そして崖の根土は、どっちを見ても、狩野川かのがわの流れに洗われている。——川のなかの藪島やぶしま。それでひるヶ小島と土着の人は云って来たのかもしれない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし酒匂の鮎が足りなくなると馬入川ばにゅうがわ狩野川かのがわの鮎を使う事がありますから随分雑種の鮓が出来ますけれどもず酒匂の鮎ならば鮓に適しています。それもおすよりはめすの方がようございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大きな宵月よいづきが、狩野川かのがわの上流からのぼっていた。木々が光る。時政も頼朝も、やがてそれへ登って来た。夏なのに、ふしぎに皆、肌寒さが感じられた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ山々も霧、野も霧、狩野川かのがわも霧の朝まだきからである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)