犬追物いぬおうもの)” の例文
三月二十一日で、この前日には、三条河原で武家一般の犬追物いぬおうものが賑やかに興行され、二日つづきの盛事であった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十世弥忠太は栄喜の嫡子で、後才右衛門と改名し、番方を勤め、万延まんえん元年に病死した。十一世弥五右衛門は才右衛門の二男で、後宗也そうやと改名し、犬追物いぬおうもの上手じょうずであった。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蕃書ばんしょ調所は洋書調所(開成所、後の帝国大学の前身)と改称される。江戸の講武所こうぶしょにおける弓術や犬追物いぬおうものなぞのけいこは廃されて、歩兵、騎兵、砲兵の三兵が設けられる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もとより流鏑馬やぶさめに限ったことはござらぬ、朝廷にては五月五日の騎射、駒牽こまひき左近衛さこんえ右近衛うこんえの荒手結、真手結、帯刀騎射たてわききしゃというような儀式、武家では流鏑馬に犬追物いぬおうもの笠掛かさがけ
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多芸な道誉が、犬追物いぬおうもの騎射競きしゃくらべにも上手なのは、聞えている。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)