犢鼻褌とくびこん)” の例文
浴しをはつて榛軒は犢鼻褌とくびこんを著け、跳躍して病人だまりの間を過ぎ、書斎に入つた。上原も亦主人に倣つて、こんを著け、跳躍して溜の間に入つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あるいは七夕に手向たむけたる犢鼻褌とくびこんの銀漢をかざしてひらひらとひるがえる処、見様みようによればただ一筋の天の川は幾様にも変り得べき者なりしを合点がてんするなるべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
メリヤスの猿股は支那人の犢鼻褌とくびこんに同じきものなれど西洋にては婦人月経中に用ゆるのみにて男子の穿うがつものならずという。洋服着るには股引だけにて六尺もいらず越中もいらず。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
犢鼻褌とくびこんじゃろ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人側の後藤等はこの宴会の興を添えむために、当時流行の幇間松廼家花山まつのやかざんを呼んだ。花山は裸踊を以て名を博した男である。犢鼻褌とくびこんをだに著けずに真裸になって踊った。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)