片輪者かたわもの)” の例文
それはもうこの時既に、逸早いちはやく私の心理におおいかかっていた、片輪者かたわものらしいヒガミ根性のせいであったかも知れないけれども……。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よくよくのことでなければ涙をこぼさない克子が、もう少し涙もろければ人にも愛されるのであろうが、その態度は誰の目にも片輪者かたわものの強情としてよりうつらないであろう。
赤いステッキ (新字新仮名) / 壺井栄(著)
狼には弱りましたね、怪我あしたやつらは大部屋でいちいち手当をしていますが、片輪者かたわものがだいぶ出来上りそうで、かおを噛み潰されていかにも始末にいかねえのが五六人ありますよ。
大根畑の專次とか言ひましたね、あのなまちろいのが、裏から來て、私の見る前で呼出しの合圖なんかしてゐましたよ。どうせ私は片輪者かたわものだから、情事いろごととは縁のない世界に住んでゐると思つたのでせう。
「……勝手にしろッ。コノ出来損ないの……カカ片輪者かたわものの……ババ馬鹿野郎ッ……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一人残らず精神的の片輪者かたわものばかりと断言して差支えないのである。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)