無駄骨むだぼね)” の例文
またわれわれにもこういうことに経験があったら、前に注意をして置けばよかったのに、経験のないため、飛んだ無駄骨むだぼねを折ることになりました。
「ふふふ、この辺の海底は、三十メートル内外で、殆んど平らであります——か。なるほど、そのような報告では、お気の毒ながら、宝探しは無駄骨むだぼねだろうよ。ははは」
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だから、漫然と元兇を尋ねたところで多分無駄骨むだぼねに終るだろう。それよりも、近道は、この三つの殺人事件の裏には、どんな動機が潜んでいるか。何がこの犯罪の原因となったか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ああああ張合はりあいがないのね、それじゃ。せっかく私が丹精たんせいしてこしらえて来て上げたのに、肝心かんじんのあなたがそれじゃ、まるで無駄骨むだぼねを折ったと同然ね。いっそ何にも話さずに帰ろうか知ら」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんなことをしたって無駄骨むだぼねだ、我ながらいささか滑稽こっけいなくらいだ、これはてっきりマレーフスキイのやつがいっぱい食わしたのだ——という意識が、じりじりと胸の中へしのんで来た。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)