無名沼ななしぬま)” の例文
そのうち、男妾の浅公が首をくくって死んでしまうと、まもなく、後家さんが無名沼ななしぬまに落ちて溺れ死んだ、つまりこんに引かれたのだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今日も、朝からお天気がいいものですから、わたしは一人で、小梨平を通り、低い笹原を分けて無名沼ななしぬまへ遊びに参りました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そんなら、あのイヤなおばさんなんて、まだ魂魄が、白骨谷か、無名沼ななしぬまあたりにとまっているでしょう、怖いことね」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とにかく、ゆっくり御逗留ごとうりゅうでしたら、遊びにおいで下さい、梨木平なしのきだいらというのを通って無名沼ななしぬまへ出ると、その沼のほとりにわたしの小屋が見えます。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
先日の手紙にありましたでしょう——わたしが、無名沼ななしぬまから帰る時に、低い笹原の中で浅吉さんにゆきあったことを。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから、何ともいえないいやな気持になって、あれほど好きな無名沼ななしぬまを逃げるように帰って来ました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
例の鐙小屋あぶみごやの神主をも一応おとずれて行こうと、無名沼ななしぬまのほとりに来て見れば、なるほど、小屋はあるが人が無い。多分、山上へ修行にでも行って留守なのだろう。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そうでござんしょう、そうでなければ、とうにわしの事は聞いておいでのはずじゃ。わしはな、この上の無名沼ななしぬまのほとりの鐙小屋あぶみごやというのにいる神主でござんすよ」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あれから、どうしたんだえ。いったい、お前は白骨の無名沼ななしぬまの中へ沈められていたはずじゃないか。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白骨谷しらほねだにが急に陥没して、こんな大きな湖になろうとは思われないし、木梨平の鐙小屋あぶみごやの下の無名沼ななしぬまが、一夜のうちに拡大して、こんな大きな池になろうとも考えられない。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まだつやつやしい髪の毛がたっぷりと——あのあぶらぎった面の色が、長いあいだ無名沼ななしぬまの冷たい水の中につかっていたせいか、真白くなって眠っているのを、たしかに見届けました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今日も、わたし、あの離れ岩の上に立って、じっと無名沼ななしぬまの水を見つめておりました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの無名沼ななしぬまなんですよ、あの沼の中に何か白いものが光って見えますから、私が近寄って見ますと、それがあなた、お気にかけなすっちゃいけませんよ、お内儀さんの死骸なんです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この手で誰かに締められて、そのまま無名沼ななしぬまの底に沈んだ、別段、苦しがる暇もなく、安らかに、無名沼の底へ落ちて行ったが、あの婆様も、まさか殺されるとは思っていなかったろう。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いいえ……今朝早く、ねまきのまんまで無名沼ななしぬまの方へ出て行きました」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あたし、きょうもまた、ひとりで、無名沼ななしぬままで行って来たのよ。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)