“焙(や)” の例文
筋や、そのほかのことについてはもう思い出せないのであるが、今も焙(や)きついた記憶となって私の心にのこっている一場面がある。
夫婦が作家である場合 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その焙(や)きつくやうな思ひ出のあるくみ子が、八田義太郎と云ふ實業家の家へ急に嫁入つてゆくと云ふことは、周次には何としても信じられない事だつた。
多摩川 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
燠に化(な)つた榾(ほだ)の呟き。——わたしの脊椎(せきつゐ)を外(はづ)しとつてする「洗骨式(せんこつしき)」を、……でなければ、肉体の髄を焙(や)きつくしてする「風葬祭(ふうさうさい)」を、……そんな末枯(うらが)れた夢見もするわな。
雪 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
そして焙(や)けつくような視線でいつまでも立ち去らず蝋燭の光に照し出された牢獄の有様を眺め入った。
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
焙(や)きつくような切なさで毎晩自分が抱く赤子の誕生が考えられた。
時代と人々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)