点燈ひともし)” の例文
新字:点灯
その内私は加藤の家の主婦にも事故ことわけを話して点燈ひともしごろから、ちょうど今晩嫁を迎えるような気分でいそいそとして蠣殻町までお宮を迎えにいった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
よりは潮が押し入れた、川尻のちと広い処を、ふらふらと漕ぎのぼると、浪のさきが飜って、潮の加減も点燈ひともしごろ。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仮にそう定めて置いて、大塚から点燈ひともし頃にテクテク荒川くんだりまで出掛け、水の中で命のやりとりの大芝居をして帰ったのがの刻過ぎたというから十時である。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
で、松太郎の帰った後、尚何時迄も引き止めて、更に様々問答したが、永い六月の日も暮れて点燈ひともし頃になったので、俄に僧は立ち上がり謝辞を述べて帰えろうとした。
高島異誌 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その日のひる過ぎに、忠通は桂の里から屋形へ帰った。きのうの接待に疲れたといって、彼は人払いをしてひと間に引き籠っていたが、点燈ひともしごろになって少納言信西を召された。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
点燈ひともしごろにそこらがようよう一片着き片着いた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これから二人はややしばらく気の置けない雑談に時を過しながら点燈ひともしごろから蠣殻町に出かけていった。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)