炒粉いりこ)” の例文
越後の三面みおもて村ではこの熟柿をトンコと呼んでいる。コウセンすなわち麦の炒粉いりこに、このトンコを合せ練って、甘味をつけて食べるという(布部郷土誌)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おれは小さい時には顏に青筋が出てゝ、ひどい疳性で皆んなを手古摺てこずらせたさうだよ。炒粉いりこが思ふやうにゆだらないと云つて泣き入つたまゝ氣絶して、一時は助らないと思はれたさうだ。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
大豆の炒粉いりこはキナコと謂って今も普通であるが、豆にはごじるや豆腐のために今一つの水浸けの法も行われている。炒り搗きを主とするのは麦類が多かった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
イカシ 粃をイカシと呼んでいる地方もある(但馬たじま方言集)。イカシバットウというのはこれを粉に挽いたもので、この地方のハットウは多分炒粉いりこであろう。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きな粉・炒粉いりこのように火にかけたものもまたくだけやすい。蕎麦そばなどは押し潰せるから是もまだ始末がよい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
滋賀県北部などで麦の炒粉いりこをカミコと謂うのと、飛騨ひだ焼米やきごめをカミゴメというのと、二つの言葉の似ているのは偶然でなく、双方ともに以前は儀式の食物であったことが推察せられる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)