潮吹ひょっとこ)” の例文
権次は綽名あだなの通り潮吹ひょっとこで、それに年だっても、四十の方へ近かったかも知れず、家も金も、貫祿も見識も無い身軽な折助風情ですから
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それを得たりと道庵先生は、囃子方を励まし立て、自分は例の潮吹ひょっとこめんを被って御幣ごへいを担ぎながら、櫓の真中で、これ見よがしに踊って踊って、踊り抜きました。
馬鹿な話ばかりして居る潮吹ひょっとこの権次が、勘定奉行の密偵とは、さすが人を見る商売のお駒にも思い及ばなかったのです。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
潮吹ひょっとこが道庵だか、道庵が潮吹だかわからないくらいに、妙境にっているのであります。
振り上げた権次の顔は、妙に突き詰めた真剣さに硬張こわばって稀代の醜怪グロティスク潮吹ひょっとこも、もう笑える人相ではありません。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
やっとのことで起きてかおを上げると、竜之助も吹き出さずにはおられなかったのは、いい年をしたお医者さんが潮吹ひょっとこめんをかぶって、その突き出した口をヒョイと竜之助の方に向けたからです。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
潮吹ひょっとこの面を禿げた前額へ上げた市五郎は、黙って自分を導いて行く、お多福かめの面を冠った男を見詰めました。
葛西かさいから婿に来る前は、大神楽だいかぐらの一座にいたそうで、道化は天稟の名人、潮吹ひょっとこの面を冠って、倶利迦羅紋々くりからもんもんの素肌を自慢の勇みの間に交り、二つの扇を持って
店框みせがまち、捨石の上に、腰をおろして、汗を入れたり、水を飲んだりする人の中に、まだ止まぬ遠音の囃子につれて、潮吹ひょっとこは、ほとんど疲れを知らぬ機械人形からくりにんぎょうのように
「何が大変なんだ、少し落着いて物を言え、お神楽堂かぐらどうから飛出した潮吹ひょっとこみたいな風じゃないか」