漬物樽つけものだる)” の例文
もちろん小屋にもかぎはかかっていた。けれど不寝番ねずのばんが付きッきりでいるわけではない。彼は漬物樽つけものだるを踏み台にして、明り窓を破って外へ出た。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
便所臭い、漬物樽つけものだるの積まさっている物置を、コックが開けると、薄暗い、ムッとする中から、いきなり横ッ面でもなぐられるように、怒鳴られた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
それでなくても漬物樽つけものだるのような形をした腹を、もっと丸くすることより考えていない。天気がどうであろうと、そんなことは一向お構いなしである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
若い身空で女のたすきをして漬物樽つけものだるぬか加減かげんいじっている姿なぞは頼まれてもできる芸ではない。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
駕のうしろに、江の島土産みやげの貝細工や漬物樽つけものだるが下げてあるから、この宿で、一息いれて、仲継ぎの人足が来るのを待ち合せているらしい。——その駕の中で、声がした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)