浪子なみこ)” の例文
祝宴が始まる前の控場ひかえじょうの大広間には、余興の舞台が設けられていて、今しがた帝劇の嘉久子かくこ浪子なみことが、二人道成寺ににんどうじょうじを踊り始めたところだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼は飛んでもない舞台へ、いつとなし登場して来たことをじながらも、手際てぎわのいい引込みも素直にはできかねるというふうだった。浪子なみこ不動がすぐその辺にあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もうそのころは知る人は知っていたが自分にはまだ初耳の「浪子なみこ」の話である。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
前回かりに壮夫わかものといえるは、海軍少尉男爵だんしゃく川島武男かわしまたけおと呼ばれ、このたび良媒ありて陸軍中将子爵片岡毅かたおかきとて名は海内かいだいに震える将軍の長女浪子なみことめでたく合卺ごうきんの式をげしは、つい先月の事にて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
女中に持たせし毛布けっとを草のやわらかなるところに敷かせて、武男はくつばきのままごろりと横になり、浪子なみこ麻裏草履あさうらを脱ぎ桃紅色ときいろのハンケチにて二つ三つひざのあたりをはらいながらふわりとすわりて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)