浚渫しゅんせつ)” の例文
とにかくこの浚渫しゅんせつ機械の小屋と土手はおそらくこの美しい上高地の絵の上にとまった蠅か蜘蛛くものような気のするものである。
雨の上高地 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大正三年十月浚渫しゅんせつの際まで其のまゝに放置せられ、発掘せる木根所々に散在し、井戸の傍に一条の小径ありて雑草中を南北に縦貫し居たりと云う。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
下水道の浚渫しゅんせつはまったく豪雨にうち任せてあったが、雨水はそれを掃除するというよりも閉塞へいそくすることの方が多かった。
東京を流れる六十九筋の溝渠ほりわりや川の底から一年のあひだに浚渫しゅんせつされる泥土の量が二万立方坪にも近いといふ事実は大して人々を驚かすものではない。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
運河の河岸に片寄せられた浚渫しゅんせつ船の赤錆びたクレーンの上に、鴎が二三羽とまっている。暗澹たる黒い空のなかでそれが、二つの白い点のように鮮かに浮び上っている。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
彼が手を伸ばすより早く浚渫しゅんせつ機が口をあけるように、籠が二つに割れて、浚渫機が泥を吐き出すように、中にはいっていた書類をデスクの上へ吐き出し、すぐに口を閉めて
超過勤務 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ですからもしこの海底を浚渫しゅんせつすることができましたならば、古来からの金銀財宝や船の破片、白骨なぞがどのくらい堆積たいせきしているか、量り知れないものがあろうと思われるのであります。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
大きな日本の戎克船ジャンクの残骸がホテルの前に散在し、また水路で二ヶ月間仕事をしていた大きな蒸気浚渫しゅんせつ船は、千フィートばかり押しながされて横っ倒しになり、浚渫バケツが全部むしり取られていた。
河川の浚渫しゅんせつというようなことで以て支配されるのである。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
仕事は複雑で、探険とともに浚渫しゅんせつの役をも兼ねていた。きよめながらまた同時に種々の測量をしなければならなかった。
古我判事は中一日を置いて四月二日には疾風迅雷的に古井戸を浚渫しゅんせつした人夫、請負った親方、検視をした医師、静子の母親の四人を喚問して調べ、同日被告支倉の第二回訊問を行っている。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)