洒脱しやだつ)” の例文
柚餅子ゆべしのやうな菓子には、鉄斎が洒脱しやだつな趣をもつたゆずの絵を描いて居た。柿羊羹を台にした菓子の中の紙には、石埭せきたいが柿の画に詩を添へて居た。
菓子の譜 (新字旧仮名) / 岩本素白(著)
清の妻の都賀子つがこが来たので鏡子は暫く座敷で語つて居た。都賀子は鏡子よりは二つ三つの年上で洒脱しやだつな江戸女である。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一つは気のいた、洒脱しやだつな物である。最後の一つは見るに堪へぬ。これ程簡単な物にもこれ程出来の違ひがあるかと思つたら、何事も芸道は恐しい気がした。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
須山は答へなかつたが、花郷は手に持つ洋燈を危気あやふげに動かし乍ら、洒脱しやだつな声をあげて叫び出した。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
が、かく今日こんにちいへども、かう云ふ貼り紙に洒脱しやだつの気を示した幇間ほうかんのゐたことは確かである。