油小路あぶらのこうじ)” の例文
丁度油小路あぶらのこうじへ出ようと云う、道祖さえの神のほこらの前で、折からあの辻をこちらへ曲って出た、見慣れない一人の沙門しゃもんが、出合いがしらに平太夫と危くつき当りそうになりました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それを見ますと私の甥は、以前油小路あぶらのこうじの辻で見かけた、摩利信乃法師の不思議な振舞がふと心に浮びました。そう云えばあの時も、どうやら二人の間には、いわくがあったようでもある。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いつぞや油小路あぶらのこうじ道祖さえの神のほこらの前でも、ちらと見かけた事があったが、その方は側目わきめもふらず、文をつけた橘の枝を力なくかつぎながら、もの思わしげにたどたどと屋形の方へ歩いて参った。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)