池鯉鮒ちりふ)” の例文
前衛軍の先鋒は、十五日に池鯉鮒ちりふの宿にはいり、十七日には、鳴海方面に近づいて、織田領の諸村へ、放火していた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先箱根にて御書付と髪のゆひぶり違候とて引付られ、半日余もかかり候由。(金三歩出し候由。)又被指添候さしそへられそろ足軽池鯉鮒ちりふ之駅にて吐血急症、近隣近郷之医を招候由。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三河国池鯉鮒ちりふ大明神の守符、蛇の害を避く。その氏子の住所は蛇なく、他の神の氏子の住所は、わずかにこみちを隔つも蛇棲む。たといその境まじるもかくのごとし(『甲子夜話』続篇八〇)。
家康がその東軍の大部隊を、野州小山から引っ返して、三州の池鯉鮒ちりふにまですすめて来たのを、いちはやく宗矩がそこまで出迎えに出た時に——であった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北条霞亭の未亡人敬は僅に箱根の関をゆることを許されて、池鯉鮒ちりふの駅まで来ると、又一の障礙に遭つた。それは江戸から供をして来た足軽が重病を発したのである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
吉田城の酒井忠次に送られて、池鯉鮒ちりふから鳴海なるみへ入った。これまでが徳川領、鳴海から先は織田領なので、ここには織田家の一門が凱旋の主君を出迎えに立っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)