水掛論みずかけろん)” の例文
その条件が実は手品または詐欺さぎの挿入し得る条件だったのであるが、それだといって実験を打ち切れば、結局水掛論みずかけろんに終り、火は益々燃え上るばかりである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
あってもしまいには水掛論みずかけろんになってしまうので、結局、お互いの脳髄を怪しみ合いつつ物別れになる事が、最初から解り切っている。そうして、あーでもない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
如才じょさいないお政は絶えず笑顔を見せているが、対手あいては甚だ迷惑に感じた。と云って、ここで何時いつまで争っても究竟つまり水掛論みずかけろんである。市郎も終末しまいには黙ってしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「——というたところで後となれば水掛論みずかけろん。武蔵の方に、何名助太刀がついて来ても、世間は彼の名の一つしかいわぬ。その一人の名と大勢の名とでは、世間は相違なく、大勢らしい方を憎む」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)