比無たぐひな)” の例文
ある女世に比無たぐひなにしきを所持いたし候処さふらふところ、夏の熱きさかりとて、差当さしあたり用無く思ひ候不覚より、人の望むままに貸与へ候後は、いかに申せども返さず、其内に秋過ぎ、冬来ふゆきたり候て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
是もヒステリイと申候外は無きかは不存申候ぞんじまをさずさふらへども、自分には広き世間に比無たぐひなき病の外の病とも思居り候ものを、さやうに有触れたる名を附けられ候は、身に取りて誠に誠に無念に御座候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)