欣々いそいそ)” の例文
お雪は、欣々いそいそとして、炬燵こたつ蒲団ふとんをかきあげたり、座蒲団をすすめたりしていると、北原は持参の蕎麦饅頭そばまんじゅうと、塩せんべいをお雪の前へ出し
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また曩日いつかの様に、今夜何処かに酒宴でもあるのかと考へて、お定は慎しやかに水潦みづたまりけながら、大工の家へ行つた。お八重は欣々いそいそと迎へたが、何か四辺あたりを憚る様子で、そつと裏口へ伴れて出た。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お松は欣々いそいそとして与八を自分の部屋の方へ導いて来ましたけれど、久しぶりのお客をもてなしたいし、それに今はじまろうとするお説教も聞きたいしで
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
福松の欣々いそいそとして帰ったのはこれがためでありました。水草を追う稼業であればこそ、身の振り方のついたということに、無上の安心を置いていたらしい。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お雪は、新しい知識のあこがれがいっぱいで、本を抱えると、欣々いそいそとして下へおりて行きました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
男は女をうながして、竜之助には改めて慇懃いんぎんにお辞儀をして、手を取り合わぬばかりに欣々いそいそとして立ち行く二人の後ろ影を、机竜之助は暫らく見送るともなく見送っておりました。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
福井の宿についたその翌日午後、福松は欣々いそいそとして宿に帰って来ました。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)