樽御輿たるみこし)” の例文
何処かで祭の太鼓、まだ朝のうちだというのに、樽御輿たるみこしを揉んでいるらしい、子供達の声などが、遠くの方から揺り上げるように聴こえます。
ちょうどかつぎ上げられた樽御輿たるみこしが、担がれたままで自由になっているように、真闇まっくらな人波のうごめく中で提灯のみが宙に浮いているようです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
各町内の要所要所には大供子供の一団が樽御輿たるみこしをとりまいて喧嘩の手筈をしめしあはす。そんなことの好きな伯母さんは私にも人なみに襷をかけ、鉢巻をさせて表へつれだした。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
「困ったことに町内の樽御輿たるみこしを担いでいる小若連中の一人だが、お祭へ夢中になっているから、その男の人相を突き止めなかった。おそろいを着て、手拭てぬぐい頬冠ほおかむりをしていたことだけは確かだが——」