極楽水ごくらくみず)” の例文
橋本左五郎とは、明治十七年の頃、小石川の極楽水ごくらくみずそばで御寺の二階を借りていっしょに自炊じすいをしていた事がある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東の方は本郷ほんごうと相対して富坂とみざかをひかえ、北は氷川ひかわの森を望んで極楽水ごくらくみずへとくだって行き、西は丘陵の延長が鐘ので名高い目白台めじろだいから、『忠臣蔵』で知らぬものはない高田たかた馬場ばばへと続いている。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
働いておらぬ貧民は、貧民たる本性を遺失して生きたものとは認められぬ。余が通り抜ける極楽水ごくらくみずの貧民は打てどもがえ景色けしきなきまでに静かである。——実際死んでいるのだろう。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)