松居松葉まついしょうよう)” の例文
ところが、やがて其の厳しい門を押し破って、和田わだ合戦の板額はんがくのように闖入ちんにゅうした勇者があらわれた。その闖入者は松居松葉まついしょうよう君であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
市村座いちむらざで菊五郎、吉右衛門きちえもんの青年俳優の一座を向うへ廻して、松居松葉まついしょうよう氏訳の「軍神」の一幕を出した、もう引退まえの女優生活晩年の活動時機であった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この頃居士はもう今の家に移っていたのだが、棟続きの隣の家に松居松葉まついしょうよう君が一時住まっていた事があった。裏庭伝いに訪ねて来て雑談をして帰ったこともあったかと思う。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
懸賞小説といへばその以前より毎週『万朝報よろずちょうほう』の募集せし短篇小説に余も二、三度味をしめたる事あり。選者は松居松葉まついしょうよう子なりしともいひまた故人斎藤緑雨さいとうりょくうなりしといふものもありき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その薄ぼんやりした眼をこすらせたのは、松居松葉まついしょうよう君の史劇「悪源太あくげんた」が明治座で上演されたことである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは十一月のなかば過ぎから開場した芝居で、わたしは松居松葉まついしょうよう岡鬼太郎おかおにたろう鏑木清方かぶらぎきよかたの諸君と、たしかその四日目を平土間ひらどまで見物したように記憶している。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)