杉苗すぎなえ)” の例文
土地の人たちは正月の味噌搗みそつきに取りかかるころから、その年の豊作を待ち構え、あるいは杉苗すぎなえ植え付けの相談なぞに余念もなかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
下肥を汲む。木の苗を盗む。近所の事ではあり、病気と皆が承知して居るので、表沙汰にはならなかったが、一同みんな困り者にして居た。杉苗すぎなえでもとられると、見附次第黙って持戻もちもどったりする者もあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「おがあ、おらさ杉苗すぎなえ七百本、買ってろ。」
虔十公園林 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
六十六歳の声を聞いてから、中新田なかしんでん杉苗すぎなえ四百本、青野へ杉苗百本の植え付けなぞを思い立つ人だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おれはあの金兵衛さんが、古屋敷のほらへ百二十本も杉苗すぎなえを植えたことを知ってる——世の中建て直しのこの大騒ぎの中でだぜ。あれほどのさかんな物欲は、おれにはないナ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)