朱漆あかうるし)” の例文
お菊は、帯の間から、朱漆あかうるしの一かんを出して吹きだした。あしをわたる風が、ふなべりへ霜をおくように冷たかった。そして笛の穴に、彼女の息が白く見えた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男が、首からはずした胴乱を見ると、箱の左右に「諸国銘葉めいよう」とし。前には「目ざまし」とだけ記して、その下の草という字のかわりには、たばこの葉が一枚朱漆あかうるしで書いてあります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)