本郷座ほんごうざ)” の例文
いつか本郷座ほんごうざへ出た連中であるが、こうして日のかんかん照りつける甲板に、だらしのない浴衣がけで、集っているのを見ると、はなはだ、ふるわない。
出帆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちいさな草屋のぬれえんに立って、田圃たんぼを見渡す時、彼は本郷座ほんごうざの舞台から桟敷や土間を見渡す様な気がして、ふッとき出す事さえもあった。彼は一時片時も吾を忘れ得なかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
昭和三年二月木村富子きむらとみこ女史が拙著『すみだ川』を潤色じゅんしょくして戯曲となしこれを本郷座ほんごうざの舞台にのぼした。その時重なる人物にふんした俳優は市川寿美蔵いちかわすみぞう市川松蔦いちかわしょうちょう大谷友右衛門おおたにともえもん市川紅若いちかわこうじゃくその他である。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
女史は充分に舞台を知っているうえに、遠くない前に本郷座ほんごうざで「波」というのをって、非常な賞讃を得た記憶が新しかったから、気まぐれではなかったのにどうしたことか中止してしまった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)