本村ほんむら)” の例文
夏になるとその辺で、撃剣の稽古を済ました青年たちが、歌を唄ったり、湯の中で騒ぎまわったりする声が、毎晩のように田圃越たんぼごしの本村ほんむらまで聞こえた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大和の内も、都に遠い広瀬旧城あたりには、人居などは、ほんの忘れ残りのやうに、山蔭などにあるだけで、あとは曠野と、本村ほんむらを遠く離れた田居たゐばかりである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「如何もせんけど……先日こなひだ本村ほんむらのお春さんが豐後の別府に行つてからそんなに手紙を寄越したから……」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
気の知れぬと古人も言ひける麻布あざぶ本村ほんむらの草深き篠田長二のむさくろしき屋台に大丸髷おほまるまげの新女房……義理もヘチマも借金も踏み倒ふしの社会主義自由廃業の一手専売、耶蘇ヤソを棄てて妻を得たとの大涎おほよだれ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それに——本村ほんむらを遠く離れた、時はずれの、人まぬ田居たいばかりである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)