それは東京大学の工学部の赤煉瓦れんがの建物があったころで、もう四十年ぐらい前になるかと思うが、木下杢太郎きのしたもくたろう君にさそわれて、佐野利器さのとしかた博士を研究室に訪ね
麦積山塑像の示唆するもの (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
木下杢太郎きのしたもくたろう北原白秋きたはらはくしう諸家の或時期の詩篇には築地の旧居留地から月島永代橋つきしまえいたいばしあたりの生活及び其の風景によつて感興を発したらしく思はれるものがすくなくなかつた。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それでなくては、こう揺れる筈がない。僕は木下杢太郎きのしたもくたろう君ではないから、何サンチメートルくらいな割合で、揺れるのかわからないが、揺れる事は、確かに揺れる。
Mensura Zoili (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一同で選挙した団長が日露役の志士沖禎介おきていすけの親父さんで、一等船客の中には京大教授の博士もいれば、木下杢太郎きのしたもくたろう岳父しゅうとさんもいる。中学校長もいれば有名な富豪もいる。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
木下杢太郎きのしたもくたろう北原白秋きたはらはくしゅう諸家の或時期の詩篇には築地の旧居留地から月島永代橋つきしまえいたいばしあたりの生活及びその風景によって感興を発したらしく思われるものがすくなくなかった。
ある夜自分は木下杢太郎きのしたもくたろうと、東京停車場のそのころ開かれてまだ間のない待合室で、深い腰掛けに身を埋めて永い間論じ合った。何を論じたかは忘れたが、熱心に論じ合った。
享楽人 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
薬師寺についてはかつて木下杢太郎きのしたもくたろうにあててこう書いたことがある。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
既に去歳きょさい木下杢太郎きのしたもくたろう氏は『芸術』第二号において小林翁の風景版画に関する新研究の一端いったんを漏らされたが、氏は進んで翁の経歴をたずねその芸術について更に詳細なる研究を試みられるとの事である。