昂奮かうふん)” の例文
刻々高まつて行く異常な昂奮かうふんを抑へて、窓から曉の光の忍び込むのを見た時は、全く腹の底から救はれたやうな心持になりました。
「ぢやあ、もう一番!」勝負事で愉快に昂奮かうふんしてゐるらしい声を、その生徒はその儘部屋のなかへ向けてゐた。「せめて四人はぎ倒さなくつちや!」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
神経的に燃えた。それは全く何の精神統一もない人の——彼自身のやうな人の昂奮かうふん髣髴はうふつとして燃えた。思慮なく、理性を没却して、そのくせ力なく、ただ一気に燃えた。
昂奮かうふんは少しづつ沈んで来た。石段を登りつめると、家の横から表通りへ出る路地があつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
どんな期待も、どんな昂奮かうふんも、どんな痙攣けいれん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「本当ですか。」記者はにはかに昂奮かうふんした。「これはすばらしい。あなたはその人の名をよく覚えてゐるんですね。」
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
挨拶を濟ませると胸を抱いたまゝ暫らくは口もきけないほど昂奮かうふんして居ります。
何時、富岡に振り返られても、旅空の女の淋しさを、上手にみせる哀愁の面紗ベールを、ゆき子はじいつとかぶつてゐた。その面紗の後で、ゆき子はひとりで昂奮かうふんして、やるせなげに溜息ためいきをついてゐるのだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
特別な昂奮かうふん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
平次は娘の昂奮かうふんを外らさないやうに、心持せき込んで訊ねます。
美しい顏は昂奮かうふんに輝いて、その眼は火のやうに燃えます。