旅所たびしょ)” の例文
一方の藤夜叉は、関明神のお旅所たびしょのうらに、かがまっていた。笠をぶかに沈め、竹の杖を両手に持って、石垣の下の石の一つに腰かけたまま、もう一歩もあるけないような呼吸をしていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暗いなかでお神輿の金物かなものがからりからりと鳴る音と、それを担いで行く白丁はくちょうの足音がしとしとと聞こえるばかり。お神輿は上の町のお旅所たびしょへ送られて、暗闇のなかで配膳の式があるのだそうで……。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)