敝履へいり)” の例文
敝履へいりの如く棄て去るのが多いものであるが、独りソクラテスに限っては、こういう不始末が毫末ごうまつもなかった。
ソクラテス (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
君臣のちぎりすら敝履へいりのごとく捨て去る人間もいる乱世に、きのうまで敵であった毛利の一誓紙が——どれほど文字どおりに約束を履行りこうするか? ——そこまでは考えても見ず
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを敝履へいりのごとく捨てて顧みないというようなことも幾度いくたびとなく繰返された。
彼は妾と同棲せるがために数万すまんの財を棄つること、あたかも敝履へいりの如くなりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
世界的文豪としての輝かしい名声を敝履へいりの如く棄て、神への奉仕の生活を声明して、宗教的述作へ専心しはじめたトルストイは、一八八六年はじめて『イヷン・イリッチの死』を公けにして
意志薄弱のダメな男をほとんど直観にって識別し、これにつけ込み、さんざんその男をいためつけ、つまらなくなって来ると敝履へいりの如く捨ててかえりみないという傾向がございますようで
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)