支那船ジャンク)” の例文
波立たぬ水は朦朧もうろうとして霞んでいた。支那船ジャンクの真黒な帆が、建物の壁の間を、忍び寄る賊のようにじっくりと流れていった。お杉は時々耳もとで蝙蝠こうもりの羽音を感じた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
甲谷は靴さきに浮ぶ支那船ジャンクの燈火を蹴りながら、饒舌しゃべった言葉の間をすり抜けようとして藻掻もがいた。すると、対岸に繁ったマストの林の中から、急に揺れ上った暴徒の一団が、工場の中へ流れ込んだ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)