むちう)” の例文
彼はひて目をふさぎ、身のふるふをば吾と吾手に抱窘だきすくめて、恨は忘れずともいかりは忍ぶべしと、むちうたんやうにも己を制すれば、髪は逆竪さかだうごめきて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
凡夫の悲しさ、源はその日のことを馬の過失せいにして、さんざんに当り散した。丁度、罪人をむちうつ獄卒のように、残酷な性質を顕したのです。馬に何の罪があろう。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
同時に例の不断の痛苦は彼をむちうつやうに募ることありて、心も消々きえきえに悩まさるる毎に、齷齰あくさく利をふ力も失せて、彼はなかなか死の安きをおもはざるにあらず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)