)” の例文
箱の中に何があるかを知り拔いてゐる自分も、父の手つきが大業おほげふなので、一寸胸を躍らせて蓋のらるゝのを待つといふやうな心地になつた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
治外の法権れしはやや心安きに似たれど、今もかの水色眼鏡の顔見るごとに、髣髴ほうふつ墓中の人ので来たりてわれと良人おっとを争い、主婦の権力を争い
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
素足に藁草履をバタ/\さして、芋の蔓のやうに曲りくねつた細い野路を、妻が被つた手拭もらずに、風呂敷に包んだ飯櫃おひつを提げて急いで來た。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
小さな桐の箱の蓋はられた。中から現はれたのは、見窄らしい一つの曲物まげものであつた。「何んぢやい、埓もない。」と言ひたげな顏が平七の上に讀まれた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
數之介は土瓶の蓋をつて、濛々と立ち騰る湯氣の中に、白髮頭を突ツ込みつゝ、蒸され加減を見ようとした。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)