掩護物えんごぶつ)” の例文
退却を余儀なくされた縦列は街路に密集し、何らの掩護物えんごぶつもなく恐るべきありさまで、角面堡かくめんほうに向かって猛射を浴びせた。
「場合によっては斬り合うかもしれない。立ち木の多いのは結構だ。多勢を相手に戦うには、掩護物えんごぶつが必要だからな」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
戸浪三四郎が目星をつけて置いた掩護物えんごぶつは片方の耳の悪い美女赤星龍子だった。龍子の隣りに席をとった彼は消音ピストルを発射して巧みにごまかした。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
掩護物えんごぶつの作業をして居た官軍の工兵は、その不意に驚いた為、周章は全軍に及んだので、ついに退却の止むなきに至った。原倉、伊倉に一大隊を置き、あとは悉く高瀬まで退いたのが午後六時である。
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
他の一隊は、地にい局舎を掩護物えんごぶつにして、ジリジリと、こっちを向いて進撃してきた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
カツン、カツンと木を切る音! 掩護物えんごぶつを造るため、おのを振るっているのだろう。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さあ壕を掘れ、鹿砦ろくさいをつくれ、墻壁しょうへきをこしらえろ、掩護物えんごぶつを設けろ、小杭を打ち込め、竹束を束ねろ! 武器の手入れだ、武器の手入れだ! 槍を磨け、刀を磨け、鉄砲の筒を掃除しろ。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)