押柄あふへい)” の例文
大工とあるに多方源太が弟子かなんぞの使ひに来りしものならむと推察すゐして、通れと一言押柄あふへいに許しける。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そんな風の押柄あふへいなことを言つて、寺から寺を歩いたかもしれん。或は、居候三ばい目には箸をおき、であつたかもしれん。おそらく後者であつたらうと私は信じてゐる。
故郷に帰りゆくこころ (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
根が態とせし偽飾いつはりなれば却つて笑ひの尻声が憂愁うれひの響きを遺して去る光景ありさまの悲しげなるところへ、十兵衞殿お宅か、と押柄あふへいに大人びた口きゝながら這入り来る小坊主、高慢にちよこんと上り込み
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)