抱擁はうよう)” の例文
このごろの富岡は、眼には落ちつきがなく、邦子を愛撫し、抱擁はうようしてゐても、突然その動作を打ち切つて深く溜息をつくやうになつてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
例へば、亜剌比亜アラビア人の形容を其儘そのまま翻訳して居るのに非常に面白いものがある。男女の抱擁はうようを「ボタンが釦のあなに嵌まるやうに一緒いつしよになつた」とじよしてある如き其の一つである。
すると、その隙間からはすぐ、日の光が投げつけるやうに、押し寄せるやうに、沁み渡るやうに、あの枯木に等しい薔薇の枝に降りそそいだ。薔薇を抱擁はうようする日向ひなたは追々と広くなつた。