手洗てうづ)” の例文
姉妹きやうだい流許ながしもと手洗てうづをつかひながら話した。お栄の方は水道の前に蹲踞しやがんで冷たい柔かな水でもつて寝起の顔を洗つて居た。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「一晩繪圖面の番をした棟梁でも、朝になれば手洗てうづも使ひ、飯も食ふだらう。その間神棚の下に居たのは誰だ」
井戸端でうが手洗てうづを濟ませて、大急ぎで入口に顏を出すと、遠州じまのお仕着せに、店の名『池田屋』と染めた前掛をした、十五六の小僧が、突つ立つたまゝ顫へてをりました。
「幾太郎は梅吉に身代りを頼んで、夜中手洗てうづに行く親父の眼を誤魔化ごまかし、そつと拔け出してお艶に逢ひに行つたんだらうよ。今までもちよく/\そんな事をやつて居たに違えねえ」
「無駄だよ、相變らず家中の口が揃つてゐるのだ。——若旦那は風呂へ行つて歸つたきり、店から一と足も動かないとな。あの家の人間は、手洗てうづにも行かないやうな顏をしやがる」
中には母親が一人、父親は手洗てうづへでも行つたらしく、部屋には居りません。
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)