所作しぐさ)” の例文
「何故犯人は、息の根を止めただけでは足らなかったのだろうね。どうしてこんな、得体の判らぬ所作しぐさまでもしなければならなかったのだろう?」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「面白いな八、明日は俺が行って、娘の所作しぐさを見極めよう。そいつは何か理由がありそうだ」
自分は昨夜、左大臣のあのしつッこい所作しぐさを見ているうちに、平素胸中にわだかまっていたそう云ういろ/\なもや/\が、酔いが発するのと共に次第に湧き上って来るのを覚えた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いつまでも愛の所作しぐさは消えないのではないが
「そうすると、いったいその棺龕カタファルコと云うのは、どこにあるのだね?」検事が問い返すと、法水はちょっと凄惨な形相をして、耳を窓外へかしげるような所作しぐさをした。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
とその声が、ふと杜絶とぎれたかと思うと、彼女は瞳を片寄せて、耳をしげるような所作しぐさを始めた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あの時わっしは、あの向き合わせを見ると、思わずそれに、暹羅シャム兄弟が聯想されて、っとなりました。そして、たぶん切りつける所作しぐさの拍子に、逢痴の咽喉を刺したのかも知れませんよ。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
また、可愛くって可愛くってたまらないときは、どうしても、表面は憎み足りないような、あんな所作しぐさをしていたの。でも、勘忍してね。私、もうどんな事があっても、一生離れたくないのよ。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
原本どおり肝を引き抜かせまでするのであるから、耳を覆い眼を塞がねばならぬような所作しぐさが公然と行われ、卑猥怪奇残忍を極めた場面が、それからそれへと、ひっきりなしに続いてゆくのだった。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)