懐旧かいきゅう)” の例文
旧字:懷舊
一年前まではこうして学校へいったものだと思うとかれは自分ながら懐旧かいきゅうの情がたかまってくるように思われた。母はてぬぐいと紙をだしてくれた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
このごろ秋晴しゅうせいあしたちまたに立って見渡すと、この町も昔とは随分変ったものである。懐旧かいきゅうかんがむらむらと湧く。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうしてその鋭いうちに、懐旧かいきゅうと云うのか、沈吟ちんぎんと云うのか、何だか、人を引きつけるなつかしみがあった。この黒いあなの中で、人気ひとけはこの坑夫だけで、この坑夫は今や眼だけである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「春や昔」と懐旧かいきゅうの意にものしたるは、これも追善の意を含ませたるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)