懐愛なつか)” の例文
吉里の眼もまず平田に注いだが、すぐ西宮を見て懐愛なつかしそうににッこり笑ッて、「兄さん」と、裲襠しかけを引き摺ッたまま走り寄り、身を投げかけて男の肩をいだいた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
承知はしたけれども、心は平田とともに平田の故郷くにに行くつもりなのである——行ッたつもりなのである。けれども、別離わかれて見れば、一しょに行ッたはずの心にすぐその人が恋しく懐愛なつかしくなる。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)