愚人ぐじん)” の例文
かつて佐藤春夫が云ったことに聾者ろうしゃ愚人ぐじんのように見え盲人もうじん賢者けんじゃのように見えるという説があった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
赤塚では二人の伜の變死したのを、この山浦甚六郎のせゐにして居るさうだが、飛んでもない事だ。それは疑心暗鬼ぎしんあんきといふものだ——自分の罪に責められる愚人ぐじんの惱みだ
友人の心のはたけたがやされているや否や、英国のことわざに賢人とは正しき時に、正しき言をはなつ者なりとあるが、実にそのとおりで、どんな正しい言でも時ならぬ時に放てば愚人ぐじんの言にもおとる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「さうだらう。其方の人相は、どう買ひかぶつても惡人といふ相ぢやない。鼻がそつくり返つて、眼尻が下がつて、齒が少し亂杭らんぐひだな。そんな刻みの深い顏は、總て善人か愚人ぐじんにあるものぢや」