惹付ひきつ)” の例文
が、それでいて、その失敗の過去が、私に取っては何処か床しい処がある、後悔慚愧はらわたおもいが有りながら、それでいて何となく心を惹付ひきつけられる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
二人とも相前後して惹付ひきつけられて行くようになったのは、寧ろ当然の帰結と云うべきであったろう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
か弱い女を置いて逃去った道雄と、それだけの酔いどれにぐっとも云わせなかった蝙也と、比べて考えるまでもなく、町の心はあやしい力で蝙也のほうへぐんぐん惹付ひきつけられた。
松林蝙也 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして、もしその允許が出ない時には、結局実行を見合わすということになっていた。——これが私の注意を深く惹付ひきつけた点で、また私もかくあろうとして、平生からつとに戒心しているところである。
ソクラテス (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その代りに芸術と自称するのも恥かしい浅劣、低級な謎々の魅力を以て大衆の注意を惹付ひきつけた。
探偵小説の真使命 (新字新仮名) / 夢野久作(著)