悔悛かいしゅん)” の例文
長い間の悔悛かいしゅんと克己との後、みごとにはじめられた贖罪しょくざいの生活の最中に、かくも恐ろしき事情に直面しても少しも躊躇ちゅうちょすることなく
胸中すでに成竹ある千々岩は、さらに山木を語らいて、時々川島家に行きては、その模様を探らせ、かつは自己——千々岩はいたく悔悛かいしゅん覚悟かくごせる由をほのめかしつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
いわゆる、悔悛かいしゅんの情云々——そういったところだったに違いない。自分はその二三句をここに引いてみよう。自分としては非常に忸怩じくじとした、冷汗をもよおされる感じなんだが。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
悔悛かいしゅんの情じゅうぶんと見破ったところから、お手当にすべきところを特に見のがして慈悲をたれてやった掏摸すりの名手のあのくし巻きお由が、まる一カ年ぶりでいっそうのあだめいた姿とともに
U氏はYの悔悛かいしゅんに多少の同情を寄せていたが、それには違いなくても主人なり恩師なりの眼をかすめてその最愛の夫人の道ならぬ遊戯のオモチャになったYの破廉恥を私は憤らずにはいられなかった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼の全生涯は無益なものとなり、彼のあらゆる悔悛かいしゅんは失われ、ただ「何の役に立とうぞ?」と言うのほかはなかったであろう。彼はあの司教がそこにいるように感じた。
私がなした悔悛かいしゅんと私が立ち戻った善行とにはついに多少の幸福が伴ったということを言い得んがためだ! 先刻、あの善良な司祭の所にはいってゆき、聴罪師に向かってするように彼にすべてを語り