)” の例文
ちょいと、風邪を引くよ、と先刻さっきから、隣座敷の机にっかかって絵をきながら、低声こごえで気をつけたその大揺れの船が、この時、最早や見事な難船。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は連れ立つてそこらの珈琲コーヒー店に入つて往つた。音楽家は暖い珈琲と菓子の一皿とを乞食にあてがひながら、自分は卓子テーブルりかゝつて、せつせと作曲に取りかゝつた。
なぐれと、衆口一斉熱罵ねつば恫喝どうかつを極めたる、思ひ思ひの叫声は、雑音意味もなき響となりて、騒然としてかまびすしく、あはや身の上ぞと見る眼危き、唯単身みひとつなる看護員は、冷々然として椅子にりつ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
冷々然として椅子にりつ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)