怱忙そうばう)” の例文
啄木、永く都塵に埋もれて、旦暮たんぼ身世しんせい怱忙そうばうに追はれ、意ならずして故郷の風色にそむくうちに、身は塵臭に染み、吟心またつかれをおぼえぬ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
我は古き畳の上に、忠勤なる古帽はすすびし壁の上に、各々かくて人生の怱忙そうばうしばしのがれて、胸の波さへ穏やかなる安心の蓮台れんだいに休らふを得るに至れる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
弥生やよひヶ岡の一週、駿河台するがだいの三週、牛門の六閲月、我が一身の怱忙そうばうを極めたる如く、この古帽もまた旦暮たんぼ街塵に馳駆ちくして、我病める日の外には殆んど一日も休らふ事あたはざりき。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)