怒気いかり)” の例文
旧字:怒氣
としらふで冷罵おひゃれば、巡査は全身の怒気いかり頭上に上りて、「無礼者め。」ともう血眼ちまなこ、二ツ三ツなぐりつける。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭ごなしにのゝしらうとして、かへつて丑松の為に言敗いひまくられた気味が有るので、軽蔑けいべつ憎悪にくしみとは猶更なほさら容貌の上に表れる。『何だ——この穢多めが』とは其の怒気いかりを帯びた眼が言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奥の方では、怒気いかりを含んだ細君の声と一緒に、叱られて泣く子供の声も起る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
流石さすがにお志保の居る側で、穢多といふ言葉が繰返された時は、丑松はもう顔色を変へて、自分で自分を制へることが出来なかつたのである。怒気いかり畏怖おそれとはかはる/″\丑松の口唇くちびるに浮んだ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)