復活いきかえ)” の例文
父の夢は子の胸に復活いきかえった。「金釵きんさ」とか、「香影こうえい」とか、そういう漢詩に残った趣のある言葉が正太の胸を往来した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
にわかに復活いきかえるように暖い雨の降る日、泉は亡くなった青年の死を弔おうとして、わざわざ小県ちいさがたの方から汽車でやって来た。その青年は、高瀬も四年手掛けた生徒だ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
庭の草木も濡れて復活いきかえった。毎日々々のあつさで、柔軟かよわ鳳仙花ほうせんかなぞは竹の垣のもとに長い葉を垂れて、紅く咲いた花も死んだように成っていたが、これも雨が来て力を得た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
灰色の雲も低く、空は曇った日、午後から雨となって、にわかに復活いきかえるような温暖あたたかさを感じた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
高瀬の胸に眠っていた少年時代の記憶はそれからそれと復活いきかえって来た。彼は幾年となく思出したことも無い生れ故郷の空で遠い山のかなたに狐火の燃えるのを望んだことを思出した。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼はあらゆる草木が復活いきかえる中で、やがて来る若葉の世界を待つのを楽みにした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)