彼奴あやつ)” の例文
汝らが迅速なれば、その襟がみをつかんで、彼奴あやつ捕虜とりことなすこともできる。——それっ、近づいてきた。かかれっ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし唯者ではござりませぬ。時の破目はめで、こうして誘われては来たものの、彼奴あやついよいよ不審と見ましたら斬って捨つるまでのことでござりまする。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで彼奴あやつから巻き落いた刀を彼奴の鼻の先に突付けたるや、大公儀の役人を何とすると、縄付まま威丈高になりおったけに、その顎骨あごたんを蹴散らかいてくれた。
彼奴あやつは元来詐欺賭博いかさま入獄いろあげして来た男だけに、することなす事インチキずくめじゃが、そいつに楯突たてついた奴は、いつの間にかあなの中で、彼奴あいつの手にかかって消え失せるちう話ぞ。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『何せい、殿様をあやまらせたのは、彼奴あやつばかりだからのう』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼奴あやつどものする事は一から十までサッパリわからん。切支丹と似たり寄ったりじゃ」
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)