弛廃しはい)” の例文
旧字:弛廢
一たびつながれては断ち難い、堅靭けんじんなるなわを避けながら、己は縛せられても解き易い、脆弱ぜいじゃくなる索に対する、戒心を弛廃しはいさせた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すなわち、この両者は早くから家中の綱紀粛正を考え、弛廃しはいし堕落した政治のたてなおしを計画していた。
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
尤もその頃は武家ですらが蓄妾を許され、町家はなお更家庭の道徳が弛廃しはいしていたから、さらぬだに放縦な椿岳は小林城三と名乗って別に一戸を構えると小林家にもまた妻らしい女を迎えた。
僧尼に対する訓令の多くは学業の弛廃しはいいましむるにあった。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
全部がそうでないにしても、士風がそのように弛廃しはいしてゆく事実は否定しがたい、これではならぬと思う者もあったろうが、時の勢いに抗してまで起つ者はなかった。
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)