幾通いくとおり)” の例文
「調べさえすれば因果はいくらでもある。御前、梅に幾通いくとおりあるか知ってるか」と煙草盆を釣るして、また煙管きせるの雁首で灰の中をき廻す。宗近君はこの機に乗じて話頭を転換した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は冗談半分じょうだんはんぶんに夫人をあしらう事なら幾通いくとおりでもできた。しかし真面目まじめに改まった、責任のある答を、夫人の気に入るような形で与えようとすると、その答はけっしてそうすらすら出て来なかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)